秘密4

カルピス
2010年03月24日
42,625
ある年の秋口、祖父が入院した。

胃の調子がよくないとのことで病院に行ったら、即入院となった。

胃がんだった。
胃の何割かを切除し、回復しつつあったがその他にも心臓、肝臓の状態が思わしくなく、しばらく病院にとどまることとなった。

この事がおばと私の距離を一気に縮めることとなる。


お見舞いは手術前に一度行ったきりだった。

暇を見て行こうと思っていた。
こんな顔でも見せるだけで喜んでくれる。



「早い時間に行くんだったら家寄ってあげなよ。」
母が言った。

ドキっとした。

「いいけど、なんで?」

「荷物いっぱいあるんだから大変でしょ。」

「そっか、わかった。」


家族に病人がでると、それも長期の入院ともなると大変だ。

今まで保たれていたバランスが一気に崩れる。

ましてや痴呆の祖母もかかえている。
親戚同士、なるべく協力した。


その中で、おばは週4のペースで病院に通っていた。
着替え、食事の介助、運動などやることは山ほどある。

また家から病院までは便が悪く電車、バス等で一時間半ほどかかった。

車でも一時間程度かかるが、荷物を考えると大分楽になるはずだ。



《大義名分ができた》

不謹慎だが、そう思ってしまった。


家から病院までの車内はおばと2人きりだった。

祖父のことを中心にごく普通の会話をした。
あまり調子はよくないらしい。


病室に入り、祖父の姿を見て愕然とした。

人はこんなに急激に痩せられるのか、と思うほどそこには痩せこけた老人がいた。


なるべく平静を装った。

「顔色いいね。でもちょっと痩せた?」

「飯がよ、マズイんだよ。」

「退院したら美味しいもん食べに行こ」

しばらく会話をした。


面会時間が終わり、また来ると祖父に告げ病室を後にした。

洗濯物などを抱え、おばと共にエレベーターで下に降りた。

いつもの私なら、その空間ですべきことがあったが、その時は全く頭になかった。



「ショック…だよね?」

「あ、うん…少しね。」

「○○君は優しいもんね。」

名前を呼ばれてはっとした。
隣にいるのはおばなんだ。


車に乗り込んだ。

「大丈夫、お義父さん強いから…」

「うん…」


もう祖父はあの家に戻れないと思った。


おばが私の頭を撫でながらそっと肩に置いた。

「大丈夫、大丈夫。」

すごくほっとした。

「チュッ」

遠慮ぎみに、ぎこちなく私のおでこにおばの唇が触れた。



驚いた。

何度となく唇を重ねていたが、彼女が能動的に私に触れたのは初めてだった。


目が逢った。

離れない。

磁力をおびているかのように吸い寄せられた。


貪り合った。
舌が絡まりあう淫らな音が響く。

彼女の髪を、耳を、輪郭を指で優しくなぞった。

「はあっっ」

身体の底から湧き出るような声。

何度もその動きを繰り返した。

存在を確認するように。



病院とは不思議な場所だ。
そこは言うなれば生命力の著しく減退した人間の集う場所。

私の精神はそこから受ける負のエネルギーに反発する。

より精力的にエネルギッシュであろうと、精神も身体も作用する。



葬式の後はシたくなる。
そんなものに近いのかもしれない。


指だけではとどまらない。

耳に、首筋に舌を這わせた。

彼女の身体は時折、波打つように震えた。


止まらなかった。

自分の男としての欲望を満たしたい訳じゃない。


彼女をもっと知りたかった。
彼女の中の女をもっと覗いてみたかった。

触れていたかった。



指は徐々に下へ、彼女の舞台へと続く膝の下に掛かる幕をくぐった。

ゆっくりと駆け上がった。

彼女は目を閉じている。


たどり着いた…



「ああっ」

悲鳴にも似た声。

触れるか触れないか、優しくなぞる。

下着の上からでもわかる湿潤。


おばが堕ちていく…
この手で、指で女へと…




その時、車外で人の声が。
他の見舞い客か?

慌てて離れる2人。

しばらくの沈黙。


「もう帰らなくちゃね。」

時間の壁。



帰り道、赤信号の度にキスをした。

言葉は交わさなかった。



彼女を送った後、ひと気のない暗がりに車を停めると、猛り狂った自分自身を慰めた。


すぐに果てた。